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宗教法人法講話(抜粋)その2

講演者はその1と同じ「現職の寺院住職であり弁護士でもある」方です。

先日、大変な事実が明らかになりました。
その事実とは、天理教本部の長野悦司法人課長(本部準員)が昭和59年3月24日に龍谷大学でもたれた宗教法学会の研究会という公式の場で行った報告です。
 報告の題名は、「小規模宗教法人の管理運営について」というものです。内容は、非常に率直・正直なモノで天理教の内容・実情が赤裸々に書かれています。

私がびっくりした内容の一例をあげますと、
教会長の年齢構成では、51%が60歳未満、60代が23.6%、70代が25.3%であり、その60歳代以上の教会長のうち後継者不在の割合が60歳代では35.6%、70歳代では41.9%もの割合にのぼっている、というものです。
 全体の一般教会の数が16,863ヶ所から計算すると、後継者不在の教会数は3,203ヶ所、全体の2割にもなります。もっと具体的に言えば、60歳代のまぁ、3人に一人、70歳代のもう二人に一人近くの会長さんが後継者不在で悩んでいる、という事が分かった訳です。

(加藤ハルアキ注:このお話は31年前発行の冊子です。統計の発表自体がS59年ですから、33年前という事になります。更に長野課長の衝撃的な報告が続きます。)

「昭和55~56年に文化庁の宗務課で実施された実態調査では、信者数50人未満の宗教法人が全体が22%に対して、天理教では46%という高い数値です。」
「教会の名称が変わる、改称という事もございます。これが10年間で450件です。これは残念ながらその殆どが後継者不在という事情で、本部あるいは上級教会である大教会から、人材を派遣して後を継がせ、新たに再出発をするというような形をとらせている中で、新たに担当する者の感情的な問題なり意欲の問題を勘案して、教会の名称を変えるという事でございます。この点も私ども教会の変動が激しい一つの原因でございます。」
「教会の移転については、最高が昭和49年の年間387件、10年では2,021件です。そうした変動というのが、不活動法人の生まれる一つの土壌でもあると思われます。」
「新設教会は、この10年で510ヶ所ございまして、年平均50ヶ所程の教会が生まれています。」

以上の報告を合わせて読むと、どのような教団の実情が浮かび上がってくるでしょうか?
先に、長野課長の報告にあった、60歳代でまあ3人に一人、70歳代ではもう2人に一人近くの教会長さんが後継者不足に悩んでいる、という実情もある訳ですから。
そのような後継者不足が現実化して、教会長が出直(死亡)したが後継者がいない例が、10年間で450件以上あって、本部か上級が派遣した人材にあとを継がせ、その分教会財産は、出直した教会長の遺族には相続させなかった、という事でしょう。

派遣された者は感情的問題等から、初代の付けた名称が気に入らず名称改称をしたのが450件もあった、というのです。その際に、教会財産を処分して移転する例も2,021件の移転例の中に相当数含まれていると推察できましょう。

こうしてみますと、新設教会数が10年で510ヶ所という統計は、実情としてはかなり厳しい実態の現れなのではないかと思われます。
これに今後は、3,203ヶ所の後継者不在教会の相当部分が続くことが予想されます。

長野悦司法人課長は次のような数値もあげています。
「天理教の教会数が全体で16,863ヶ所ですが、非法人の教会1,475ヶ所ありますので、法人教会数は15,388ヶ所です。・・・宗教法人天理教の包括する宗教法人の中でも大教会を大規模法人、所属が10以上の分教会を中規模法人、単独で活動しております分教会を小規模法人、という形でとらえております。小規模濃人については、全教会数の中で12,800ヶ所くらいある訳です。全体の70%位が問題とさせて頂いている小規模法人です。」

要するに、部内教会10ヶ所以上ある分教会が中規模法人で、それ以下が小規模法人という分類をしている訳で、全体の教会数との割合では70%位ですが、宗教法人となっている教会数との比較では83%にのぼります。中規模、大規模法人である大教会とで残りの17%を占める訳です。

さて、長野悦司法人課長の結論部分、非常にショッキングな内容です。

「小規模法人を、その教会が所属する大規模または中規模の法人への吸収合併をしていったらと考えている訳です。」

「大・中規模法人へ小規模法人を合併していく、当然財産もそこへ移していく事になりますから、所属する法人の教会の土地建物は、飛び地境内地・境内建物の形になっていくわけです。」

「教会は信者さんの貴い寄付金で賄われている訳ですから、そうした場合の会計処理が問題です。教会の収入は吸収した側の中・大規模法人の会計に参入していく、そして経費は、吸収・合併されて非法人になった教会へ回付していくという形にしなければならないでしょう。」

「給与面につきましては、法人である所属する大・中規模法人から出ているのだということでも、これは筋が通るのではないかと考えております。」

長野法人課長はさすがに法律の専門家だけあって、言葉を注意深く使用しています。
この中で、「小規模法人を中規模法人に吸収・合併する」ではなく「大・中規模法人へ小規模法人を合併・吸収していく」と言っている点注意が必要です。
 これは、小規模法人は中規模法人に吸収されるのではなく、中規模法人を飛び越えて大規模法人(つまり大教会)に吸収・合併される事もありますよ、いや、それが当たり前になるかもしれませんよ、と言っています。

直属の大教会は、現在151ヶ所です。

 仮に、その大教会に小規模法人である分教会が合併・吸収されていったとしたら、部下教会をもぎ取られた中規模法人である分教会はどうなるでしょうか?その結論は容易に想像できます。
 仮に、大教会に皆吸収されるようになったら、その大教会は今度は天理教教会本部に吸収・合併されないという保証は何処にあるのでしょうか?そして、天理教維持財団への一切合切の寄附というシナリオを想像する事が出来ないでしょうか?
 今ですら、モノ言えぬ教団の中にあって、その時になって誰が異議を差し挟むことができるでしょうか?

(加藤ハルアキ注:引用の中の文章に『会計は中・大規模法人に算入されても、経費は吸収され非法人になった教会に回付(=負担)させる』というのも衝撃的な発言だ。吸収して財産やお供えを全部取り上げても、教会の維持管理運営費は、元の教会で負担しなければならない、と言っている。)

長野法人課長は、
「現場の担当者の一私案である」
と言いつつ
「近い将来、代表役員(表統領と推測)の下に研究グループを編成して、一つの審議を経たうえで、当然教団内部のコンセンサスをとりまとめる」
のが筋だ、と述べている。

これは当然の事であるが、失礼ながら教団本部の教庁の、一課長の立場で、堂々と外部の公式な研究会の場で一私案とは思えないようなショッキングな内容の報告をしたり、近い将来表統領の下で研究グループを編成するとか、教団内のコンセンサスを取りまとめるとか言えるのでしょうか。
 こう考えると、すでに教団トップの了解・合意、いわゆるゴーサインがあった上での報告と考えなければ理解できるものではありません。逆に言えば、トップの意思はもう決定しているとみて、今後に対処しなければならないのではないでしょうか。

今回ご紹介した長野論文の内容を検討した結果としては、もはや教団内部での「教祖の教え」への復元は絶望的だと判断せざるを得ません。
 一度とにかく皆が、本部から離脱独立して、お互いに対等平等な立場で、ゆるやかな再度の統合を計画していかないと、「一列兄弟」の教祖の教えに復元した教団は実現しないのではないでしょうか。



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